青い桜島
2017.10.20 23:59 |




彼女は18。わたしは21。
あの頃の二人で、桜島へ渡った。

フェリーの名物うどん
枇杷のソフトクリーム
ぬるい足湯

台風が近づく空
小雨の混じる海風
傘を差さないわたしたち

夕暮れのデッキで振り向くと、
白い息を吐いていた島が、黒く溶け始めていた。

わたしたちの青い時代が、夜に紛れていく。

真っ直ぐな髪
ふっくらした頬
煌めく瞳
残酷な笑顔

紛れただけで、消え去ったわけではない。
見えないだけで、息を吐き続けているのだ。

あの時も今も。これからも。





※鹿児島で、富良野塾6期の後輩女子と再会した10月20日の詩です。
「しあわせのかけら」の『note』にその日の夜アップしたもの。
今日は正確には2017年11月5日ですが、表題の日付はその日に合わせました。




まーちゃんの横顔 ~M君を悼んで
2017.10.13 15:54 |

まーちゃんが逝って一週間が過ぎた
東京の気温は十一度
冬でもなく春でもない、中途半端な風が吹いている

癌に冒されていたのは知っていた
移住先のハワイで息を引き取ったという
南の空は、きっと此処より明快で寛大だ

出会ったのは、彼が18か19の頃
常夏の島とは真逆の
アスパラや牛が育つ北の大地で
先輩と後輩として一年だけ
ともに学び、ともに働き、ともに暮らした

背が高く少し猫背で
言葉数はけっして多くはなく
人懐っこくて
明らかに生意気で
ニコッと笑えば大抵のことは許してもらえると
本能で悟っていた、3つ年下の面倒なヤツ

正確な日付は覚えていない
吹雪の音がしていた
先生の家で、先生の誕生日を祝うパーティ
その日のわたしは食事当番で、
イチゴを奮発して生クリームも泡立てて
チョコレートの香りがする、ケーキを焼いた

ハッピーバースデーを皆で歌い
先生が勢いよくろうそくの火を吹き消し
ひとしきりそれぞれがお祝いの言葉を述べたあと
リビングを見下ろす中二階の物置の
隠れがのような場所へ上がっていくと、先客がいた

「やだ、誰もいないと思ったのに」
「やなのはこっちですよ」
顔だけは笑顔の、まーちゃんだった
だらんと寝そべったまま
むっとした目だけ、こちらに向けている

彼はひとりでマンガを読みたかったといい
わたしもひとりでケーキを食べたかったといい
ふたりいれば窮屈なその場所で
なにを話すわけでもなく
わたしたちはしばらく、ただそこにいた
階下で飛び交う、賑やかな雑音を遠くに押しやって
ひゅうひゅうと流れる雪の、内なる声を聴くように

まーちゃん
まっさきに思うよ
あの夜のあなたの横顔を
哀しいくらいはっきりと
朗らかに痩せた45歳のあなたではなく

其処はどうですか
居場所は見つかりましたか

今日の富良野はマイナス一度
あの頃と同じ雪が
降っているかもしれない




※2016年2月。
 6期生の故・森田正彦(まーちゃん)を悼んで書いた詩に、加筆しました。
 先週、塾生が集まったときに見た、あの頃の彼の写真。カッコよかったです。




おちょうさんのモンシロチョウ
2017.10.13 15:25 |

大柄で、足が長くて、色黒で
ガハハと笑う『おちょうさん』
見た目は豪胆で、はっきりとした顔立ちは凛々しいけれど
本当は誰より繊細な、涙もろい『おちょうさん』
どうしてみんなが『おちょうさん』と呼ぶのか
それは、あなたのなかに
小さなモンシロチョウが棲んでいるからだと
わたしは思います
拠り所を求め、ふるえていた純粋な蛹に
待ち望んだ春が、ようやく訪れたのですね
今日はあなたの蝶が、美しく羽ばたくとき
「結婚、おめでとう」


※2016年5月、富良野塾7期の内藤道子(おちょうさん)に贈った詩です。
 先日10月7日(土曜)に同期と後輩数名が集まり、この詩を読んでくれたので掲載します。








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